密室の恋人

「はい?」

「お前が俺を好きになればいいし。

 俺がお前を好きになればいいんだ。

 そしたら、自然と結婚するだろう?」

 しないよ!?

 ってか、会長の何番目の息子だか知らないけど、そんなめんどくさい家に嫁ぐのはやだ、と思っていた。

「あ、待て。
 今日は会議だった。

 明日な。
 ちょうどいい。

 金曜だし。

 じゃあ、明日」
と勝手に話を決め、行こうとした蒼汰だったが、振り返り笑って言う。

「だが、珍しいな。
 エレベーター以外で俺を見てるのは」

 気づかれていたのか、と思った。

 蒼汰はわざとなのかなんなのか。

 エレベーターに乗らずに階段を下りていく。

 その足音が消えたあとで、

「あ……カフェオレ」
とようやく思い出し、自動販売機を振り返った。