眩しいくらい光の入るキッチンのカウンターで蒼汰が珈琲を淹れてくれる。
スツールに座る凛子は、いい香りだなー、と思いながら、サイフォンにお湯が吹き上がるのを眺めていた。
「俺は手をかけた方が必ずしも美味しくなるなんて思ってないが。
こうやって、珈琲が入るまで待ってる時間は嫌いじゃないな」
と蒼汰が言った。
「そうですね。
実はインスタントも最近のは、なかなか侮れない味がしますけど。
でも、やっぱり、こういう時間はいいなあと思います」
「お前も家でゆっくり珈琲淹れたりするのか」
と訊かれ、
「いえ、うちは、下に素晴らしいコンビニがあるので」
と苦笑いする。
下に降りたら、いつでも安く美味しい珈琲が飲めるので、最近は自分で淹れたことなどなかった。
「そうか。
あの侑斗とかいう男が居る店が下にあるんだったな。
じゃあ、帰りは部屋まで送ってってやるよ」
「え?
大丈夫ですよ。
港からは帰れますよ」
「いや、あの男、俺と出かけたのを知ってるだろう。
あれから、なにも連絡ないよな?」
「連絡ないって。
此処、携帯入らないじゃないですか」
と言うと、ともかく、ついて帰ってやる、と主張する。



