密室の恋人

 そういえば、お伽話の王子様は大抵、どんな過去も許してくれそうな優しい人が多いが、どうやら、現実の王子は、なかなか甘くないらしい、と思った。

「昨夜、現れたのは、たぶん、あのもう一人の蒼汰さんです」

「エレベーターがないと現れないんだろう?

 なんで、昨夜は現れられたんだ?

 しかも、俺の身体を乗っ取ってまで」

「それはーー」
と凛子は言葉に詰まる。

 彼の言葉を自分の口から伝えるのはさすがに抵抗があった。

「そいつはお前のことが好きなんだな?」

 さすが蒼汰はすぐにそう言ってきた。

 答えないでいると、
「なるほど」
と言う。

「よし、帰ろう」

「えっ?
 珈琲サイフォンは?」
と思わず言ってしまうと、蒼汰は、お前、今、なに言ってんだ、という顔をしながらも、

「……楽しみにしてたのか?」
と訊いてくる。

「はい」
と場違いにも素直に答えると、

「わかった。
 じゃあ、今から淹れてやろう」
と言う。

 とりあえず、願いは、きっちり叶えてくれるようだった。

 王子というより、魔法のランプの精かな、と思ってしまう。