密室の恋人

「聞いたろう。
 俺は会長、伊月光太郎の息子だ」

 はあ。

「俺はなんとしても、あのオッサンに負けるわけにはいかない!」

 はあ、そうですか。

「だから、お前っ。
 俺と一ヶ月以内に結婚するんだ!」

「あの~。
 今の話、社長も信じてなかったですよね?」

「うるさい。
 俺と別れるなら、お前、クビだ」

 いや、待って。
 そもそも付き合ってないよ!?

「……貴方は上から目線で、金銭感覚もおかしいですが。

 こんなところで、権力を持ち出してくるタイプには思えなかったんですが」

 そう言うと、蒼汰は溜息をつき、
「そうだな。
 すまん。
 少し、理性を失っていた。

 昔から、あのオッサンとの勝負になると血が騒ぐというか」

 せいぜい、釣りで勝負してください、と思っていると、少し真面目な顔で考えた蒼汰は、

「わかった。
 じゃあ、あとでデートしよう」
と言い出した。