私の通う都内普通レベルの共立県つくば高校は…はっきり言って終わっている。






がやがや




「ハハハハっ♪」


昼休み。教室の隅でお菓子を食べながら、友達に借りた漫画を読んで爆笑する。

これが私。



日野 亜香莉(ひの あかり)

勉強もスポーツも苦手だけど、友達がいるから学校に行くのは大好き!元気と明るさだけが取り柄!

ブラウンの肩くらいまでのボブヘアーで、伸ばしていた前髪を最近切ってイメチェンしたばかり。

身長は160センチで体型は普通だけど、日々ダイエットしながらお菓子ばかり食べてる(笑)

とにかく毎日が楽しい高校1年生!





「ねえね♪E組に転校生が来たって知ってる?」


手持ちのミラーを片手に唇にグロスを塗るのは、親友の園田 泉(そのだ いずみ)。

高校入学してから仲良くなって、気がつけば腐れ縁になり親友に。泉は長い黒髪に色白のクール顔で、すごく美人でスタイルも頭も良く頼りがいのあるお姉さん的存在。




「転校生ー?」


目をクリクリさせながら、ポッキーを口に入れるのは及川 由愛(おいかわ ゆめ)。彼女は泉と同じで高校に入学してから仲良くなり、今では親友になった。

由愛は癒し系の顔で可愛らしい顔をしていて、明るいふわふわの髪はまるで人形みたいで、女子力も高くモテる。

私達は同じクラスでいつも一緒。優しくて面白い2人が大好き!





「そうそう。なんかさ~超イケメンみたいで女子達が騒いでるみたいだよ」

「ふーん…この時期に転校生なんて珍しいね~」

「ね。今三学期だし…って!あんた聞いてんの?」



ベシっ





「痛!」


漫画に夢中になっていた私を、泉はポッキーの空箱で頭を軽く叩いた。





「何すんのさぁ~」

「漫画なんか読んでないでガールズトークしようよ」


頭を押さえる私に、泉は怖い顔をしてビシッと指を差した。





「ちゃんと聞いてるよ?転校生がどうのって話でしょ?」

「あんたまるで興味ないでしょ?」


漫画をペラペラとめくりながら口を尖らせる私を見て、泉は見透かしているように目を細める。





「うーん…まあね~」


転校生もだけど…イケメンていうのにも特に惹かれないなぁ。

かっこいい人ってナルシストっぽいから苦手だし…





「そんなだから16年間彼氏いないんだよ」

「う…」


泉の言葉が胸にチクリと刺さる。

そう。私は今まで生きてきて彼氏は愚か、好きな人もいた事もない。




「ひどいな泉は~」

「由愛ちゃーんっっ」


よしよしと私の頭を撫でて慰めてくれる由愛に、私はひしっと抱きついた。





「亜香莉だけ彼氏がいないからって、そんなふうにいじめたらかわいそうだって~」

「あんたも遠まわしにひどいって!」


由愛は気がついない所で人を傷つける天 然なところがあり、私はよくその攻撃を受ける事が多い。

それを見て泉は大笑いすると言うのがお決まりで、今も手を叩いて笑っていた。


確かに泉と由愛は彼氏持ちで、彼氏がいないのは私だけ…おまけに誰かに恋したことすらない。





「亜香莉の好きなタイプは?」


由愛に質問された私は、持っている漫画をペラペラめくった。





「こんな人かな?」


そして読んでいたコミック漫画の主人公を指差す私を見て、泉は頭を抱え由愛は苦笑いをしていた。





恋愛なんてよく分からない…

人を好きになるって…どういうことなの?