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スマホの番号を交換したあたしたちは、それぞれの家へと歩いていた。


まあ一緒にいたい気持ちはあったけれど、真っ黒な服の下には血が残っている。
一刻も早くそれを洗い流したい気持ちだった。


時刻は夕方近くで、家に戻ると駐車場に母親の車が止めてあった。


仕事から帰ってきているみたいだ。


あたしは一旦玄関の前で立ちどまり、そして大きく深呼吸をした。


これから5人もの奴隷を集めるんだ。


できるだけ自然でいた方がいい。


あたしは家のドアを開けて「ただいま」と、いつの通りに声をかけた。


リビングから「おかえり」と、お母さんの返事が返って来る。


リビングを開けると、買い物をしてきたのかスーパーの袋から食材を取り出しているお母さんの姿があった。


「宿泊合宿は疲れたでしょ、今お風呂ためてるからね」


こちらを見ずに当たり前のようにそう言うお母さん。


《mother》が用意周到に準備しているということはわかっていたけれど、いざ自分の母親が騙されているのを見ると、心のがギュッと締め付けられる感覚になった。