あたしへの優しさ。


という演技をしているのだろう。


残念ながら、優也さんの仕掛けたトラップに気が付いてしまったあたしにはそんな優しさ通用しないけれど。


それでもあたしは嬉しそうにほほ笑んだ。


「優しいんですね」


「それほどでもないよ」


ほほ笑みあう、仲のいいカップル。


「これから夕方までどうする?」


優也さんがスマホで時間を確認する。


まだ13時にもならない。


さすがに早すぎたか。


「とりあえず、チケットを渡したみんなにメッセージを送るつもりでいます」


「あぁ。それがいいね。遅刻しないように、とか、自然な感じでね」


「わかっています」


あたしは頷いた。


優也さんも何度も頷く。


「ごめん、ちょっとトイレ」


落ち着きのない優也さんはそう言って席を立った。