「三浦さんね。
みのるってけっこうメンクイなんだ?」

「顔で好きになったわけじゃないよ。
彼女冷たいって言われてるけど、本当はすごく優しい子なんだ。入学式の日、水道が壊れててびしょ濡れになったんだけど......、その時、三浦さんがハンカチ貸してくれたんだよ」


珍しくハニカミながらうつむくみのるに、けっこう本気なのかな、と思う。


「ハンカチってお前、少女漫画か」

「敦士うるさい」


爆笑している敦士に後ろから蹴りを入れていると、今まで黙ってあたしたちの話を聞いていた一輝くんがふいに立ち上がった。


「三浦先輩は彼氏おると?
他に好きな人がおるって言われたと?」

「え?ううん、彼氏はいないみたいだけど。
あんまり話したことないからって」


困惑ぎみに答えるみのるの答えを聞いて、一輝くんは目を輝かせ、みのるの肩に手を置く。


「それなら、もっと仲良くなってから、再チャレンジすればよかばい」


さすが一輝くん、どこまでもポジティブ。
みのるはそんな一輝くんに、残念そうに首をふって、あきらめたように笑った。


「うん......、だけどさ、三浦さんって男子とほとんど話さないんだよね。
いいんだ、どうせダメだって分かってたし、フラれてかえってスッキリしたよ。これで野球に集中できる。
みんな、話聞いてくれてありがとう」


三浦さんって男子どころか女子ともほとんど話さないもんね。友達いないんじゃないかってレベル。

仕方ないのかもしれないけど、あきらめ笑いしているみのるになんだかこっちの方がすっきりしないまま、それぞれ教室に向かった。