「ツーアウトー!あとひとつ!」


続く二番バッターもあっけなく三振にとられると、秀が立ち上がってチームのみんなにかける声は、今までで一番熱が入っている。

最終回、三点差、ツーアウトランナーなし、球場は完全にあとひとりムード。


アウェイムードのなか、もしかしたらラストバッターになるかもしれない一輝くんがバッターボックスへと近づく。


秀のいるバッターボックスへと入る一輝くん、その姿を見て、思わずスコアブックとペンを持つ手に力が入る。


一輝くんにはがんばってって言って、昨日秀には負けないでって言って、あたしはどっちに勝ってほしいんだろう。

どっちに負けてほしくないんだろう。

一体自分がどっちを応援しているのかもよく分からなくなって、思わずため息をついてうつむいた。


「あれ?何か話してる?」


みのるの声に顔をあげると、たしかに秀と一輝くんが顔を近づけて何かを話しているのが見えた。