プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負

試合中、しかも甲子園での試合なのに、にやけてる場合じゃない。

それは分かっていても、ニヤニヤが抑えきれず、にやけた顔を必死で隠していたら、キャッチャーマスクをつけた秀がマウンドに走っていくのが見えた。


イラついたようにマウンドを蹴るメガネくんに、キャッチャーマスクを外した秀が真剣な表情で何やら話しかけている。

ん?ていうか、いつのまにかまた一点追加されてるけど、何があったんだろ?

スコアブック書けてない、ヤバ。


「くっそ、あんな格下にホームラン打たれるなんて」

「落ち着けよ、まだ点差は十分ある。
こんなことで動揺してどうするんだよ。
高めの球狙われてるぞ」


イライラした様子の彼をなだめるように肩においた秀の手をあっさりと振り払うメガネくん。

「言われなくても分かってるよ、そんなこと」

「......。さっきのホームランは俺のリードミスだ。
あっちの四番は打てるやつだったのに、初球からもっと慎重に入るべきだった、ごめん」

「いや、打たれたのは、俺の球威が落ちてたからだよ」

「そんなことない、まだ力もあるし、今日もいつも通り良い球きてるよ。
とにかく切り替えていこう。
高田敦士以外は全員格下だよ、いつも通りいつも通り」


しぶしぶうなずいたメガネくんの肩をポンと叩いてから、バッターボックスへと戻っていく秀。


「......さっきから何やってんの?アンタ」


秀が戻っていくのを確認すると、さっきからあたしの後ろで聞こえてきていた声の主に冷めた視線を送る。

もちろんこっちのベンチにまで秀たちの声が聞こえてくるわけがない。


「実は俺、読唇術が使えるんですよ」

「あー、はいはい。すごいですね」


読唇術って、アホか。

確かに秀たちは口元を隠してはいなかったけど、この距離で唇の動き読めるってどれだけ目いいのよ。

得意気にそんなことを言ってくるアホ、秀たちの動きに合わせて声を当てていた森村には心底あきれてしまった。