「きてくれたってことは、俺についてくれる気になったってこと?」


あたしがあきれている間にも、秀はやっぱりいつものようなつかめない表情で、世間話のようにさらっとそれを切り出す。


「......一緒には、いけない」


何気なく切り出された言葉に、一瞬だけどう答えるか迷った。

まだ明日も試合があるのに、ここで言っていいのか。

だけど、秀相手に取り繕ってもムダだと思って、ありのままを伝える。


「なんで?
みどりを一番理解してるのは俺だよ。
俺にはみどりが必要だし、みどりだってそうじゃないの?」


言葉だけ聞けば、どんだけ俺様で、上からなんだよって思うはずなのに、その柔らかい口調と表情のせいか、不思議とそうは感じさせない。

少しの動揺も感じられないそのいつもの表情を、あたしは、うすぐらい灯りのしたで、ただぼんやりとみていた。


「そう、......かもね。

小さい頃からずっと一緒で、誰と付き合ったり別れても、秀とだけはずっと一緒だった。もしも運命があるとしたら、きっとあたしと秀みたいな関係なのかもしれない。

あたしがまともな人間でいるためには、きっと秀を離しちゃダメなんだと思う」


一輝くんでさえ一時は離れかけたあたしのそばに、こんなあたしのそばにいつも変わらずいてくれたのは秀だけだった。

それが腐れ縁でも何でも、それは間違いなく秀だけ。

秀といると、強くなれる。
最強のあたしでいられる。


「あたしは秀が大好きだし、大切だよ。
きっと、他の誰にも秀の変わりなんてできない」


マイペースで、いつも人を振り回して、時々ムカつくけど、それでも。

あたしは、秀が大好きだ。