七月も後半に入り、高校生活最後の夏休みも始まったとある日。

夏の強い日差しから身を守るために、みんなとお揃いの野球帽をかぶり、球場の三塁側ベンチの真上のスタンドにいた。


去年と同じく決勝戦まで勝ち進んだみんな。
ついに今日の決勝戦に勝てば甲子園出場が決定するんだ。


さっきまで下の控え室にいたときの......、
試合が始まる前のみんなの雰囲気は少しだけいつもよりもかたくて、なんだかあたしまで緊張が伝わってきた。

......でも、大丈夫、絶対勝てるはず。

去年みたいなハプニングもなかったし、去年から練習に練習を重ねてきたし、今年は甲子園経験者の先生もいるし、上手い子だってたくさん入ってきた。

去年は試合がやれる人数ギリギリしかいなかったのに、今年はベンチも埋まってるし、応援席にだって部員がいる。

去年は部員のお母さんたちくらいしか応援にきてくれてなかったのに、今年の決勝の応援席はあたしと同じように制服をきたブラスバンドの子たち、それから私服の子が何人かいて、半分くらい埋まってる。


見たことない子もいるけど、たぶんうちの高校の......、あ、あの子は。

さりげなく来ている人をチェックしていたら、一輝くんファンの早川さんと目があってしまって、なぜかにっこり微笑まれ軽く会釈された。

相変わらずの内巻きボブに、男ウケを狙ったかのような無難なモテコーデ。