心配するどころかさっさと作業に戻ったあたしを敦士は怒ったような目で見ながら、手をつかんできた。

あたしの手をつかんで強引に作業をやめさせる敦士を何よ?とにらんでみるけれど、しかし敦士も引こうとはしない。


「掃除なんてやってる場合じゃねぇよ!
もしかしたら一輝、今度の大会に出られないかもしんねぇんだぞ!?」


試合に、出られない......?

今までずっとそのためにがんばってきて、去年はギリギリのとこで甲子園行けなくて。

だけど今年は戦力も上がったことだし、また再チャレンジって時に。

一輝くんの夢だった甲子園の舞台、いや甲子園どころかグラウンドにすら立てないかもしれないと聞いて、頭が真っ白になってしまった。


「え......。
え、な、......そんなヒドイの?
嘘でしょ......?」


なんとか自分を取り戻して、動揺しながらも絞り出すように出したあたしの言葉に、敦士は演技がかったように大げさに首をふった。


「嘘だったらどんなにいいか。

誰がどう見たって重症なのに、あいつ病院いこうとしねぇし。病院行ってはっきり試合に出れないって宣告されんのが怖いのかもな。
俺が何言っても聞かねーし、にっしーから言ってやってくれよ」

「はぁ!?アンタキャプテンなのに、言うこと聞かないとか、こんなとこでのんきに言ってる場合なの?
だいたい生徒がケガしたってのに、成田先生はどうしたのよ!あ今日は出張か。

にしてもアンタ何で......、もういい!あたしが行ってくる!どこ行ったの?保健室?」

「いや体育教官室」


それだけ聞くと、がんばれよーとのんきな声援を後ろから送る敦士に返事も返さずに走った。

一輝くんが大変な時になんなのあいつ!と苛立ちを感じながら。