さすがの森村もあたしがピリピリしてんのが伝わったのか、いつものように絡むのはやめて口をつぐんだ。

森村が黙ると急に静かになるよね。

いくら森村でも、これでこりて......。


「何でそんな拒否るんですか?
好きな人がいるんですか?」


なかったわけね。

まだしつこく食い下がってくる森村には思わず頭を抱え込んでしまった。野球の方でこの粘り強さを発揮してほしいよねもう。


「好きな人がいるとかいないとか、それ以前の問題で、アンタがムリなの。あたしの守備範囲外なの。
タイプじゃない。おっけー?」

「いないのかいるのか教えてください!」


めんどくさっ。

テキトーにいるとでも言っておけばいいのか。
でもいるとかいって、誰だとか追求されても面倒。


「......いたとしても、森村には教えない」

「やっぱりいるんすか?
......もしかして小野先輩ですか」

「違うって言ってんでしょ!
今日だけで何回言わせる気よ!!
もう一輝くんのことは好きじゃないの、あたしは!一輝くんのことが!だいっきらいなの!!」


いったい何回同じことを聞けば気がすむのか。
同じことを聞かれるのもイラっとするうえに、内容が内容。よけい頭にくる。

反射的に本日二回目の平手打ちを、森村の頬に打ち込んだ。


「イッテー!ちょ、俺何回も聞いてないっす!
今初めて聞きました!」


そういえばよく考えたら。

好きなのかと一回目に聞かれたのは一輝くんからだったとあたしがようやく気づいたのは、森村が打たれた頬を押さえながら悲痛な叫び声を上げた時だった。