イヤだムリだと話も聞かずに拒否ってたけど、聞くだけ聞いてとあまりにもしつこく言ってくるので、仕方なしに聞くことにした。ほんとに聞くだけだからと念を押して。


「昼からの試合で、俺がヒット打てたらチュウしてください!」

「はい却下」


予想通り超絶くだらないことだったので、即却下すると、オーバーリアクションで地面に倒れ込む森村。


「考えてもみてよ、それ得するのアンタだけじゃん。
あたし好みのイケメンとか好きな人に頼まれてんならともかくさ。得しないどころか、アンタとキスするなんて罰ゲームでしかないし」

「そこまで言わなくても......」

「だいたいあたしにそんな頼みごとしなきゃやる気がでないわけ?アンタなんのために野球やってんの?」


あ~もうイライラする。

森村はいつも通りバカだし、だんだん暑くなってきたし、で。何がそんなにイライラするのか自分でも分からないけど、とにかく気が高ぶってしょうがない。


「ちょっ、そんな本気で怒らないでくださいよ!
ほんの冗談でした!すみません!!
今日のみどり先輩、元気ないみたいだったので、俺の冗談で笑ってもらおうと思って」


怒り心頭でまくしたてるあたしに、森村はまったまったと手を前に出す。


「はぁ?言っとくけど、すこしも笑えないから」