ほんとによかですよ、と一輝くんはあたしをなだめるように困ったような笑顔を浮かべながら、グローブを受け取った。


「敦士先輩が入ってくれたら、心強かとにね」

「まあね......。
まあ、でも、本人やりたくないって言ってるんだから仕方なくない?無理強いしても仕方ないし」


そりゃ上手い人が入ってくれたら、甲子園を目指すあたしたちにとっては助かるけど、グローブ投げるほど嫌がってるんだからどうしようもない。


「わざわざ見にきてくれたんだから、敦士先輩も野球好きだと思ったけん」

「うーん、気が向いただけとか?
もういいじゃん、あいつのことは」


とっくにグラウンドから去っていったというのに、敦士のことをまだ気にしている一輝くんに忘れるようにいうけれど、やっぱり一輝くんは残念そうな様子。


「みどり先輩は、敦士先輩のことどうでもよかですか?
付き合ってたんじゃなか?」


......そういえば、あの日一輝くんの前で別れ話したりしてたんだよね。何気に一輝くん聞いてたりしたんだ。

ここは誤解されないように、ちゃんと言っておかないと。