「じゃあね、一輝くんも楽しんできて。
早川さんによろしく」


デートとかいって帰っていった敦士理穂や彼女もちの一年を見送って、それから帰り支度をしている一輝くんのファッションチェックをしながら、彼に声をかけた。

今日は、一輝くんお気に入りの深緑のセーターに、ジーンズか。変な女がよってこないように、セーターに名前でも書いとこうか。


「......何回も言いましたけど、早川さんと二人じゃありませんよ?」


楽しんできてと言いつつも、誘い受けかまってちゃんのあたしを一輝くんは困ったように見る。


「分かってる分かってる、クラスのみんなで遊ぶんでしょ?気にしないで、ただのイヤミだから」

「そんな言い方されたら、気にしますよ!
みどり先輩がそこまで嫌なら、俺やっぱり......」

「いいから早くいきなよ、本当に遅れるって」


行くのをやめようかどうか悩み始めた一輝くんの背中を押し、強引に部室から追い出してドアをしめる。


「いいの?」

「いいのいいの、クラス会だしみんないるし。
早川さんと二人きりで行くって言われたら、何がなんでも阻止するけど」


あたしたちのやり取りを見ていたみのるに声をかけられ、すぐにうなずく。


あの内巻きボブと休みの日にまで会うのは正直面白くないけど、クラスのみんなで集まるってのなら、そこまでは束縛できない。

一輝くんもあたしとばっか一緒にいたら、世界が狭まっちゃうかもしれないし、野球部以外の他の友達とだって会いたいでしょ。