「俺は、スーパースターじゃありません。
大事な場面でエラーもするし、パッと引き付けるものもありません。前向きなだけがとりえの男です」


いきなりそんなことを言い出した一輝くんの背に、あたしもそっと手を回す。


「それしかなかけん、明日からはまた前だけ見て生きていきます。いまだけ......、弱音はいてもよかですか」


あたしを抱きしめる一輝くんの腕が震えていることに気がついて、彼の背中に回す手に急いで力を入れた。


「う、うん!いいよ!
何でも言って」

「俺のせいで負けた、ごめん。
なんであの大事な場面で暴投なんてしたのか、自分が情けなくて仕方ないです。
みんなにどう謝ったらいいのか分からない......っ」


大きな体の一輝くんが、今はなんだかちっちゃくみえる。

夏の大会の時も落ち込んではいたけど、ここまで凹んでいる一輝くんを見るのは初めて。

いつもとは違い、その声に全く明るさのない一輝くんの頭を背伸びしてヨシヨシする。


「一輝くんのせいじゃない」

「みんなそう言ってくれるけど、完全俺のせいです」


......。

誰のせいじゃない、力が足りなかっただけ、負けたのはみんなのせい。みのるには試合開始前にそうゲキをとばしたし、口ではそう言ってみても、実際負けると誰かが責任を感じてしまうもの。

しかも最終回あの場面でのエラー、一輝くんが責任感じるなって方がムリだ。


自分のエラーでサヨナラ負け、目の前でホームベースを踏まれたあのときの一輝くんの気持ちを考えれば、胸が痛くなる。