......。


「......いいの?にっしー。
追わなくても」


やば、一瞬反応が遅れた。

おそるおそるうかがうようにあたしの顔を見る理穂に、ようやく自分を取り戻す。


「理穂ごめんっ。ちょっといってくる。
すぐ戻ってくるから」


神妙な顔でうなずいた理穂にほうきを預け、急いで部室を飛び出した。







「一輝くんっ!待って。
ごめん、さっきのは違うの」


ピッチャーが投球練習をするところに戻ろうと、部室わきの草むらを歩いていた一輝くんをつかまえると、一輝くんはあたしの顔を見てため息をついた。


「分かってます、冗談です。

それより、さっきみたいなのやめた方がいいと思いますよ」

「分かってるけど......。
あたしは、みのるの恋に協力したいの。
一輝くんだって、そう言ってたでしょ?」


理穂が完全に敦士とくっついたのなら、さすがのあたしも諦めるけど、今ならまだ間に合うかも。

強引にくっつけるとかおせっかいはしないけど、ちょっと理穂にみのるを勧めるくらい良くない?


と言ってみても、一輝くんは浮かない顔。