解散後、一輝くんと裕貴の三人で電車に乗った帰り道。


二人の間に立って、裕貴といつものように言い合いしていたら、仲がいいんですねと笑顔の一輝くん。

二人して仲良くない!と声を揃えれば、ますます一輝くんが笑顔になる。どこをどうみれば、仲良くみえるのか。


「でね、こいつ、俺がエースとれたら付き合ってくれ、とか言ったんだって。キモいよね?」

「おいっ、言いふらしてんな」


あたしの肩をつかむ裕貴の手を、一輝くんはさりげなく外して、やっぱり笑顔であたしたちを見つめる。


「俺も同じようなこと考えとっと。
甲子園行けたら、好きな人に告白しようって」

「ふーん......。
みどりの好きなのってこいつだろ?
好きな人いるってさっそくフラれてんじゃねーか」

「まだ分かんないでしょ。
好きな人ってあたしかもしれないじゃん。
一輝くん、あたしのことなら甲子園とは言わなくても、すぐに告ってくれてもいいんだよ?」


御愁傷様と手を上げる裕貴をにらんでから、一輝くんを見上げる。

あたしのことかもっていうか、この一連の流れであたしじゃなかったら、どれだけ思わせぶりな男なんだって話だ。