「誰あいつ」

「何が?......あ」


話している最中に、グラウンドに目をやり、固まった敦士の視線を追う。


ユニフォームに着替えた一年、キャッチャーの防具をつけた一輝くん、はいい。


ピッチャーのみのるが帰ったはずなのに、バッターを打席に立たせ、マウンドに立っている部外者一人。

さすがに自分の高校のユニフォームでくるのは気が引けたのか、ジャージでマウンドに立っている。

部外者っていうか、よく知ってるやつだけど。


大きく振りかぶり、そいつが投げたボールを一球だけ見て敦士は息をのんだ。


「アンタこんな時間にきて、練習はいいの?」

「もう終わらせてきてんだよ。
今日からテスト始まって、昼前に学校終わったからな」


バッターボックスから少し離れたところで、大きな声で呼びかけると、あたしの方をちらっと見る部外者。

銀月館テスト始まったんだ、とポロっと言うと、周りにいた一年が銀月館?とざわつく。


「みどり先輩の知り合いですか?」

「知り合いってか、弟?」


立ち上がって、マウンドの裕貴にボールを返球してから、キャッチャーマスクをとった一輝くん。
今日もかっこいい。


あたしが時間あったらきてって裕貴に言ったんだけど、名乗ってなかったんかい。

一輝くんも得体も知れないやつのボール受けるって、さすが一輝くん。