「課長、きっと私がどれだけの言葉を今、重ねても信じて貰えないかもしれないけれど、」


「課長を裏切るような事は絶対にしませんから。」


「課長に寂しい思いをさせるなんてこと、絶対に無いから。」


「だから、私がきっと課長に」


「教えます、真実の愛を。」


我ながら随分とクサイ事を言ってるなと思う。


だけど、格好つけてる場合じゃない。


ストレートに伝えなきゃ、課長に届かない、この思い。


「ありがとう。」


課長はぽつりとそれだけ言い、また言葉を続けた。


「教育上、宜しくないのでしょうがーーー」


唇がほんの一瞬重なった。


すぐ近くにいた子供が「あー、あの二人チューしてるぅ」と言い、側にいた母親が逃げるようにその子の手を引いて行く。


「やはり、宜しくなかったですね。」


「課長っ。」


目の前で課長が笑ってる。


まるでイタズラをした子供みたいに。


今のキスに意味があるのかとか、課長はどういうつもりなのかとか考えない。


もう、知らなくていい。


今、こうして二人で笑っていられるならそれでいい。


課長が心から笑っていられるなら


それだけで私は幸せだよ。


「そろそろ行きましょうか。」


ベンチから立ち上がると私に手を差し出してくれる。


だから私も、


「はい、行きましょう。」


迷わずその手に重ねる。


離されないよう手に少し力を入れる。


すると、ギュッと力強く課長が繋ぎ直してくれた。


私達はすぐそこに見える駅へと向かった。