「ざっとこんな感じです。」
課長は淡々と言った。
「だけど、課長、確か兄弟がいないって…」
前に言ってたような。
「ああ、戸籍上は腹違いの弟がいます。ちょうど桃原さんの弟さんと同じくらいの年です。けれど誕生と同時に僕は中、高と全寮制の学校へ入れられ、その後、大学以降も家に戻る事は許されておりません。なので僕に弟がいるという感覚は全くないのです。残念ながら。」
全く残念な気持ちがないように課長は話す。家があるのに家に帰る事を許されない。
そんな事があっていいのだろうか。
大人達の都合であちらこちらへとやられ、どんな思いで過ごしてきたのだろうか。
課長がいつだって感情を顕にせずどこか冷めた目で見ているのはそんな環境で育ったからなのだと少し分かった気がする。
食べる姿が綺麗なのも両親から教えられた物ではなく教育係に注意されながら覚えたんだろうな。
一人食卓に座る小さな子供の姿が目に浮かんだ。
「気付けば僕は愛情と言う感情に嫌悪感を抱く様になっていた。何故だか分かる?」
「えっ…。」
突然、聞かれてなんと答えたらいいのか分からない。
「愛情に期待して裏切られるくらいなら最初からそんなもの求めなければいい。愛というものを憎めばいい。子供ながらに自分を守ろうとしてたのかもしれません。それ以上、傷付かなくて良いように。」
胸が苦しくなる。
少し面倒な所もあるけれど家族からの愛情をたくさん貰い育ってきた私には簡単に想像できない。
課長は淡々と言った。
「だけど、課長、確か兄弟がいないって…」
前に言ってたような。
「ああ、戸籍上は腹違いの弟がいます。ちょうど桃原さんの弟さんと同じくらいの年です。けれど誕生と同時に僕は中、高と全寮制の学校へ入れられ、その後、大学以降も家に戻る事は許されておりません。なので僕に弟がいるという感覚は全くないのです。残念ながら。」
全く残念な気持ちがないように課長は話す。家があるのに家に帰る事を許されない。
そんな事があっていいのだろうか。
大人達の都合であちらこちらへとやられ、どんな思いで過ごしてきたのだろうか。
課長がいつだって感情を顕にせずどこか冷めた目で見ているのはそんな環境で育ったからなのだと少し分かった気がする。
食べる姿が綺麗なのも両親から教えられた物ではなく教育係に注意されながら覚えたんだろうな。
一人食卓に座る小さな子供の姿が目に浮かんだ。
「気付けば僕は愛情と言う感情に嫌悪感を抱く様になっていた。何故だか分かる?」
「えっ…。」
突然、聞かれてなんと答えたらいいのか分からない。
「愛情に期待して裏切られるくらいなら最初からそんなもの求めなければいい。愛というものを憎めばいい。子供ながらに自分を守ろうとしてたのかもしれません。それ以上、傷付かなくて良いように。」
胸が苦しくなる。
少し面倒な所もあるけれど家族からの愛情をたくさん貰い育ってきた私には簡単に想像できない。



