Tell me !!〜課長と始める恋する時間

細身の課長の見た目からは想像つかない食べっぷりですっかり気を良くしたお父さん。


お酒が随分、進んだみたい。


既に出来上がりつつある。


そういえばーーー


「ねぇ、マサルは?」


今朝から見かけてないんだよね。


「ああ、何かサークル仲間と泊まりがけでボードに行くとか何とか。だからあの子、今朝、出掛ける時に残念がっていたわ。」


と、本当に残念な様子を伝えるお母さん。


そして、心からこの場にマサルがいない事にホッとする私。


これ以上、ややこしいのがいたのでは、さすがに私一人では太刀打ち出来ないよ。


「それにしても課長さんは美味しそうに食べるわねぇ。こちらもどうぞ。」


と、お得意のナッツ入りサラダや酢の物を進めるお母さん。


「はい。一人暮らしなもので、気をつけてはいるのですが不規則な食生活になりがちでして。こういうの中々食べる機会がなく、有り難いです。」


不規則な食生活になりがちって、なりがちどころかどっぷり不規則街道まっしぐらじゃん。


余計なことは言わないけどねぇ。


言いたい事は心の中で全てぶちまけ、黙ってひたすらすき焼きを食べる私。ああ、お客が来た時仕様の和牛A5ランクが美味いぜ。


「そう言えば、お礼が遅くなりましたがいつも美味しいお弁当をありがとうございます。」


「あら、嫌だっ。そんな改まってお礼だなんて。」


アカン…オカン


完全にハートビーム、課長にロックオンしちゃってるよ。


「弁当?」


事情を知らないお父さんが何だそらと言わんばかりに聞いてくる。


「あのね、課長がお昼とかちゃんと食べてなかったからお弁当持ってってるの。お母さんの手作りだけど…」


私が作ってるのよ、と堂々と言えないのが残念だ。


「僕はあまり母親の手料理を食べた事が無いのでとても嬉しく思いながらいつも頂いております。」


えっ、そうなんだ。


そんな事、今まで一度も聞いた事が無かったな。


結局、私、課長の事、何にも知らないよね。