「っで、クリスマスの夜に車で送って来るたぁ、一体、娘とはどういう付き合いを?」


うわっ、いきなり過ぎるよお父さん。どうやらマサルは自分の部屋に行かされたようだ。その事だけにはホッとする。あいつまでいたんじゃ収拾がつかない。


「ねぇ、お父さん止めてって。本当に会社の人達とご飯食べててたまたま課長に送って貰っただけだって。ねっ、課長、私達そんなんじゃ無いですよね?」


大筋、間違いない。


「ご挨拶が遅れた事、お詫び致します。桃原さんーーーいや、杏子さんは僕の大切な部下です。」


でしょ?


「ほら、部下だって言ってーーー」


「と、同時にプライベートでも大切にしたい女(ひと)です。」


「えっ?」


課長、血迷ったか?それともうちのイカれた家族を見て頭パニクってんじゃない?


「ほお、じゃあ、真面目に付き合ってんだな。」


「はい、僕はそのつもりですが。」


と、隣に座る私を見る課長。


これは合図なのか?


私からも何か言えって事?


だけど実際、付き合ってるもんね。


期限付きだけど。


しかも三ヶ月間。いや、実質もう二ヶ月とちょっとだけど。


そこは言わなきゃ良いか。


取り敢えず、この場は課長に話合わせとく?


「そ、そうだよ。真面目も真面目、すっごく真面目にお付き合いしてますっ。」


お父さんを見ると目を閉じ黙ったままだ。


そして、キッと目を見開くと


「よしっ、二人の言い分は分かった。ただ俺は課長さんの事、何も知らない。本当なら今から酒でも飲みたい所だが時間も遅いし車だろ?それでだ、」


嫌な汗が私の背中を伝う。


「明日、早速、飯食いに来い。そこで色々と話そうじゃないか。」


言うと思った。


これまでも私に彼氏が出来たりすると必ず家に呼ぶんだよね。


それでうちのお父さんの強烈なキャラにみんな圧倒されて引いちゃうと言うお決まりのコース。


お陰で付き合っても長続きしない。


ある意味、課長と同じか。


まぁ、私はちゃんと相手の事を好きになって付き合ってるからそこは一緒にしたくない。


って言うか、駄目だよ。阻止しなきゃって言うか課長、まさかうちに来ないよね?やんわり上手く断ってよ、課長?


「ご迷惑で無ければ是非。」


チーン……って頭の中で一つ鐘が鳴った気がした。


マジでか。