そのまま固まってしまった私達。


「消えちゃいましたね。」


何となく照れ隠しと言うか気まずいと言うか暗がりの中、課長に声を掛けた。


「えっ、ああ、その様ですね。」


公園の時計を見ると丁度、10時を差していた。きっとイルミネーションが消える時刻なんだろう。


ついさっきまでとは違って辺りは急に暗くなり、公園の街灯だけが薄ぼんやりと光っていた。


まるで、魔法が解けたシンデレラの様だ。


あのまま、イルミネーションが消えなければどうなってただろう?


ふと考える。


もし、私が目を閉じていれば、さらに私と課長の顔の距離は縮まったのだろうか?


それともやはり、何も起こらなかったのだろうか。


けれど、信じたい。


眼鏡の奥に見えた課長の私を見る目がいつもより優しかった事。


繋がれたままだった手から伝わる課長の温もりを。


けれど、この時に見たイルミネーションが私達の未来を表すみたいに消えたのはこの先に起こる出来事をどこか暗示していたのかもしれない。


そんな事が待っているなんて疑うこともせず、私は幸せな時間に酔いしれていた。


「送りましょう。」


そう言うとそれまで繋がれたままだった手はあっけなく離れていった。


きっと本当の恋人同士だったら、離れていったその手にもう一度、自分の手を絡め甘えたりするのかもしれない。


だけど、欲張っちゃ駄目だよね。


「はい、お願いします。」


素直に頷き、車で送ってもらうことにした。













浮かれてた。


課長とクリスマスの夜を過ごせた事にすっかり浮かれてた私。


大変な事を忘れてた。


家の手前で降ろして貰わなかった事。


クリスマスの夜だと言うのに家族全員が家に揃っていたこと。


そして、うちの家族ときたら耳?鼻?がやたらと良いのか私の帰宅を見事、嗅ぎ付けること。


全て忘れてしまってた。