あの時、課長、私と乾くんが話してても全然、そんな素振り無かったのに。


だけど、嫉妬してくれたって事は…


「課長、私の事、」


「それは無いです。」


いつもながらの即答かいっ。


ですよねぇ。


そんなホイホイと上手く行きませんよねぇ。


しかし持ち上げて落とされて、さすがにへこむわ。


「だけど嫉妬はしてくれたんですよね?」


そこ重要だからね。しつこく食いついてみる。


「ええ、恐らくお気に入りの玩具を取られた子供と同じ様な感情かと。僕なりに分析してみました。」


「はぁ…玩具ですか。」


それって……
 

「なので、まだ好きと言える感情では無いと思います。」


だよねぇ。


まぁ、そう簡単に課長の心が動くとは思ってないけど、雉原さんからのメールがあったとは言え、居酒屋に息切らせ来てくれた事、そして課長のコートに入っている私の右手を思うと少しは期待してもいいのかと、どこまでも都合よく考えてしまう自分が恨めしくもある。


私ってこんなにもポジティブシンキングだったか?


それとも目の前のイルミネーション効果が私を前向きにしてくれるのか?


「でも、嬉しいです。もうこの関係を解消しようって言われた時、無理だと思ってましたから。課長と今、こうして一緒にイルミネーション見れて私はそれだけで幸せです。」


「お洒落なレストランにも行かないで?」


「はい。居酒屋の座敷に座るレアな課長を見れてラッキーです。」


「ホテルのラウンジから見る夜景でもないのに?」


「はい、ここのイルミネーションもとても素敵です。」


「プロジェクションマッピングは?」


「課長。私に取って大事なのは今、この瞬間を大切な人と過ごす事なので課長の側にこうしていられるだけで……とっても幸せです。どんなクリスマスプレゼントよりも嬉しいです。」   


そう言って私の直ぐ隣に並ぶ課長の顔を見上げる。


少しでもこの幸せな気持ちを伝えたくて。


憧れだった人とこうして並んでイルミネーション見てるなんて本当に夢のようだよ。


例え、三ヶ月後に終わるかもしれない恋だとしても今を大切にしたい。


心からそう思う。


すると、課長も私の顔をじっと見つめて……


少しお互いの顔の距離が近くなった瞬間、


ぱっと辺りは暗くなってしまった。