その後はひたすら無言でパフェを食べた。


正直、途中から味わってない。


目の前の課長に食べてる間、興味深げに見つめられそれどころじゃなかった。


漸くカフェを出て本当ならもう少し店内をブラブラしたりしたかったけど、早々と課長の車で送って貰うことにした。


私の疲労感がマックスに達していたからだ。


車内での会話は無いけれど付けていたFMからゆったりとした音楽が流れていて心地良い。


帰ると言ったものの外は夕暮れ時でまだ帰るには少し早い気がする。


もうちょっと一緒にいたいなって気持ちもあるけれどさすがに今日は私の心臓が持ちそうにない。


それにこれまで会社での姿しか知らなかった課長の意外な一面も知る事が出来たし、それだけで十分だよね。


課長は今日、楽しかったのかな。


運転席に座る課長の横顔を見ると心なしか普段より柔らかい表情になっている。


「ん、なに?」


「えっ、ああ、あの、今日、楽しかったですか?」


つい見惚れてた。


「そうですね。これまでこういうデートってした事がなかったので。」


「こういうデート?」


「ええ、僕が見たい映画を見るなんて事は一度もなかったので。」


そうだよね、課長ってそういう人だったもんね。だけどーーー


「いつも付き合った人とはどこに行ってたんですか?」


ちょっと気になるよね、やっぱり。


どんな所へ行ってたんだろう。


「そうですね、大抵はどこかで食事をしてその後はホテルのラウンジで軽く飲んでーーーそのまま部屋を取って、と言った所でしょうか。」


げっ。聞くんじゃなかった。


ガッツリ大人のデートじゃん。


しかもホテルって……へこむわ。


ん?


「食事ってまさか牛丼?」


だって他に店知らないって言ってたし。


「まさか。流行りのイタリアンやフレンチが多かったかな。」


「課長ってそんな店にも行くんですか?」


「桃原さん、僕だってそりゃ行く事もありますよ。」


「だけどこの前、知らないって。」


「ええ、自分から行く店はあの牛丼屋くらいですね。他は相手が大抵、店を決めていたので。なので、」


急に車が止まったと思ったらいつもの駅前ロータリーだった。


すっかり日も落ちて、車内も薄暗い。


そのせいか、課長の表情が分かりづらい。


「なので、自分から女性を食事に連れて行ったのは桃原さんが初めてですね。あんな店だけど。」


そう言うと課長は薄暗がりの中、じっと私を見つめてくる。


距離が少し近付き課長の真剣な眼差しが私を捉えているのがハッキリと分かる。


「えっ……」


「もう少し、一緒にいたいと思ったのも…」


そう言いながらシートベルトを外し私の方へと覆いかぶさってくる。


な、なに?これ、なんなの?


もしかしてこのまま?


こんな駅前のロータリーで?


「そしてもっと触れてみたいと思ったのも……君が初めてだなーーー」