Tell me !!〜課長と始める恋する時間

「それよりも課長、よく分かりましたね。私がお弁当を持ってきたのを。」


「桃原さん、あの日、さんざん言ってましたよね、僕の食生活について。あれだけの事を言っておきながらお弁当の一つも持ってこなければ逆におかしいでしょ。では頂きます。」


なんて事ない顔してるけどちゃんと手を合わせてからお弁当を食べ始める課長。この前もそうだけど、いつ見ても課長の食べる姿って綺麗だよねぇ。


「あっ、そうだ。課長、好き嫌いとか無いんですか?」


「ええ、特には。何でも食べれるとお母様にお伝えください。」


「えっ。な、なんでお母さんが作ったって分かったんですか?」


「見れば分かります。おかずは申し分なく綺麗に作られているのに一緒に入っているおにぎりの形がいびつ過ぎる。なので少しカマをかけてみました。」


な、なんじゃそりゃ。て言うか、バレてたのか。だよねぇ。ずっと親元暮らしだし料理なんてしないもん。


「すいません…。だけど課長にちゃんとした食生活を送って欲しくて…。病気にでもなったら困るし。」


「ええ、桃原さんの気持ち、十分に伝わってます。昔から僕はあまり食べる事に興味がなくて適当に済ませてきたのですが、年齢とともにもう少し気を使わねばなと気になっていたので桃原さんの心遣いに感謝しています。」


話しながらも綺麗なお箸の持ち方で順にお弁当を食べすすめる課長につい見惚れてしまう。


いけない、私も食べなきゃ。お昼休み終わっちゃう。


「て言うか、課長、食べる事に興味ないって、うち製菓会社じゃないですか。食べ物を扱う会社ですよ。」


マーケティング部なので直接、その商品の製造に関わることはないけれど、新商品が完成した際には私達も試食会に参加したりと何かと食べる機会も多い。


「お菓子はまた別物です。お菓子には空腹を満たすと言う目的よりも他の理由に重点を置かれている場合があります。僕はお菓子のそういう所に興味を持ちました。」


「へぇ…私、そんな風に考えた事なかったなぁ。ただ、何となくお菓子の会社だといつだって安くお菓子買えるのかなぁとか思ってたんで。」


「でしょうね。」


眼鏡の奥から冷ややかな視線を投げかけられる。


「ところで桃原さん、そんなにのんびりしていて大丈夫ですか?昼イチでミーティングありますよ。」


「いっけない。課長、待ってくださいよ。」


「桃原さん、口に食べ物を入れて話すんじゃありませんっ。行儀が悪いっ。」


ヒィッ。