本当にこんなんで課長に本気の恋愛してもらう事出来るんだろうか。


課長に私を好きになってもらうの無理な気がしてきた。


思えば無茶な事をしてるよね、私。


そもそも課長、私の事、何とも思ってないのに……初めから一方通行の恋なのに。


あーもぉ、駄目だ駄目だっ。こんな事考えてても仕方ないもん。それよりも先ずは食事だ。


「胃袋掴むぞ、大作戦っ!」


「ふうん、誰の胃袋掴むの?」


「うわっ、お、お母さん、いつの間に帰ってきたの?」


「今でしょ。」


得意げに言うけど古いし、しかも若干、使い方間違ってるよね。面倒だから言わないけどね。


「あんた、玄関先で声掛けても返事もないし、留守かと思ったらここで一人でブツブツ言ってるし。」


「ブツブツって……」


確かに言ってたけど。


「それより、あんた、もう帰ってきたの?マサルがお姉ちゃんデートだって言ってたから、てっきり今夜は遂にお泊りかしらって思ってたのに。」


「なっ、と、泊まってくる訳ないじゃん。だから仕事だってば。」


やっぱり、来たか…マサルめ。にしても遂にお泊りって母親がいう事なのか?


「それよかお母さん、今度からお弁当のおかずとご飯多めに用意して。」


「なんで?いつものじゃ足りないの?」


「えっと、それは……暫く早めに会社行くからもう一個持っていって朝ご飯会社で食べようかなぁなんて。」


我ながら苦しい。お母さんだって明らかに怪しいって顔してるし。


「分かったわ。それじゃ、詰めるのは自分でしなさいよ。」


と、キッチンに置いておいた私のより少し大きい紺色のお弁当箱をわざとらしく振って言ってくる。


あは…全てお見通しのようだ。


課長の分のお弁当を持っていこうとしてるのバレバレだわ。


「ああ、それとあんた一人でいる時はちゃんと鍵かけときなさい。さっき空いたままだったわよ。」


「えっ、ほんと?」


「いつだったか駅向こうのお宅に空き巣が入ったっていってたでしょ?戸締まりはしっかりしてちょうだい。」


「うん、分かった。気をつける。」


娘にお泊りしてこなかったのかとか言う割にはこういう所、心配性だったりするよねぇ。


それより、来週からは早起きしなきゃだ。