「ご馳走さまでした…うっ」


駄目だ、俯くとつゆが出てきそう。車を停めたコインパーキングまでゆっくり歩きながらお礼を言った。結局、課長にご馳走になってしまった。


しかし、課長には申し訳ないけど、ゆっくりしか今は歩けない。


「いえ、申し訳なかったです。桃原さんが意外にも少食で驚きました。かなり無理をさせたのではないかと。」


意外にもって引っ掛かるんですけど。まっいっか。


「いえっ、美味しかったです。本当に。ただ……課長、結構な量、食べるんですね?」


課長の意外な一面を知れた事に驚きもあるけど、ちょっと嬉しかったりもする。  


「どうでしょう。男だと普通じゃないかな。それにあれぐらい食べておけば他に食べなくても何とかなりますし。」


ん?


「他に食べなくても?」


「ええ、大抵、まともに食べるのは一日一食なので。」


「はあ?朝ご飯は?」


「珈琲を。」


「お昼は?」


「缶コーヒーとたまに栄養補助食品とか。」


「っで、夜にさっきのですか?」   


「ええ、そうですね。外で食べて帰る場合は大抵、先程の店に世話になってます。」


大抵、世話になっちゃアカンでしょ。


この人、アカン…


マジで駄目な方の人だ。


「ちなみに課長、大体、週に何度くらい通ってるんですか、さっきのお店。」


そこ気になるよね。


「そうですねぇ、多くても週5でしょうか。」


「はあ?週に5回ってほぼ毎日じゃないですかっ。」


「ざっと7割ってとこですね。しかしながら桃原さん?7割程度でほぼと言う表現はいかがなものかと。僕の定義ではほぼと使うならばやはりそこは9ーー」


「課長っ。」


駄目だ、朝昼ロクに食べずに週5牛丼とかあり得ない。そんなんじゃいつか体壊しちゃうよ。よっぽど木の実拾って食べてる方がまだマシに思えてくる。


「は、い?」


私の勢いに圧倒され少し腰が引けている。今はまだ何ともないかもしれないけど、課長だってもう30過ぎているんだし、こんなんじゃ老後が大変だよ。


よし、決めたっ。


課長に本気の恋をしてもらう前にーーー


「私が先ずは規則正しい食事の取り方、教えますっ。良いですね?」