***


ソファに座り、母の名刺をじっと眺める。


赤い爪をしておにぎりを作っていた母。


いつだって化粧をきちんとしていた母。


そんな母に抱かれると甘い香水の香りがいつだってしていた。


「今度は母に彼女を紹介しようか。」


らしくない事を口にしてみると彼女から電話が。


恐らく公開処刑から漸く解放されたのだろう。


「はい、三鬼です。」


ーーーカチョー、三鬼ですとかって言わなくても分かってますよぉ。カチョーに掛けてるんでしゅから。


「酔ってるんですか?」


ーーーどう思いますぅ〜?


「今、どこです?車で送ります。そこまで迎えに行くので場所を教えて下さい。」


全く、雉原が付いてながらどうしてこんなにも飲ませた?


ーーーカチョー、私はどこにいるのでしょうかっ。


駄目だ。会話にならない。


「とにかく、直ぐに車を出します。そこから動かないでください。それと何か近くに目印は?」


そう言いながら上着を羽織り、キーを手に持つ。


しまった、風呂上がりで靴下履いてない。


ったく。


「桃原さん、大丈夫ですか?それで何か周りに目印見つかりましたか?」


頼むから安全な所にいてくれと願うしかない。


ーーーカチョー、あのれすね、目印っていうんですかねぇ。ありますよ。


「なに?どんなの?ビルそれも公園とかですか?」


ーーーあぁ〜、カチョーがとかって言ったぁ。とかって曖昧なヒョーゲンはいけませんっ。って前に言ってたのにぃ〜。


「ああ、もう、分かりました。僕が悪かったです。それで何が見える?」


何とか靴下を履き、リビングを出ようとした時


ーーーえっとぉ、カチョーんちが見えた。


「はあ?」