Tell me !!〜課長と始める恋する時間

家に付きシャワーを済ませ、ふとテーブルに置いたままの名刺を手に取る。


父から貰った母の名刺だ。


実はこの前、漸く父に彼女を紹介する事が出来た。


会う前からガチガチに緊張する彼女を安心させたくて、いつもの決めセリフを言う。


「僕を誰だと思ってる?」


そう言うと決まって彼女の表情が和らぐのだ。


けれど実際は僕がその彼女の柔らかな表情に安らぎを貰っている。


そう思ったのは例の弟と婚約者の騒ぎの時だった。


父の会社に向かい案内された部屋のドアを開ける時、彼女の顔をふと見た。


彼女もこちらを見る。


その表情には緊張と不安が入り混じっていたけれど、それでも僕に寄り添ってくれる彼女の存在につい顔が緩む。


彼女との恋を守るためなら何でも出来る気がする。


そんな風に思えるなんて不思議なものだと。


これが愛の力というものなのか。


僕のそんな思いが通じたのか彼女も柔らかな笑顔を向けた。


あの時僕は、一生この笑顔を守りたいと思った。


そして今回、父にあった時もその事を告げた。


「僕の大切な人です。彼女と真剣な交際をしています。」


縁談話が消えた今では僕の話などどうでもいいだろうと思っていた。


しかし、父から返ってきた言葉は思っても見なかった言葉だった。


「そうか。良かった。お前にも漸くそういった人が出来たんだな。」


「どういう意味ですか?」


僕はその言葉を聞いても何か父には思惑があるのではと素直に受け止めることが出来なかった。


「どういう意味も何も親が子の幸せを願うのは当然の事だろう。」


親が?


子の幸せを願う?