***
長い長い回想を経て牛丼屋を後にする。
ふと、スマホを取り出し彼女に連絡をしたくなるのをぐっと堪える。
自分からそんな風に思うのもこれまでなかった。
会えないなら声だけでも聞きたいなんて。
彼女は今日は女子会という名の公開処刑だ、と言うような事を言っていた。
僕が「どういう意味?」と聞くと
「全部、課長のせいです。」
と、言っていた。
ワケが分からずそれとなしにその辺りの事情に詳しそうな乾くんを捕まえて聞いたところ、
「当然じゃないですか、飲み会の席で桃原さんが倒れた時、遠い席からすっ飛んできて、しかもですよ、頭を打たないようにとナイスキャッチしていた俺を押し退け桃原さんを軽々抱き上げると颯爽と出ていったじゃないですか、課長。」
「ああ…、あの時は必死でしたから何も考えず気が付けば体が動いていました。」
その通り答えると
「暫く悲鳴が止まりませんでしたよ。女子社員の。雉原さんが叱りつけて漸く収まったくらいですから。」
「そんな事になってたなんて知りませんでした…」
こっちはそんなどころではないから全く知らない話だ。
「いつだって冷静沈着、難攻不落の鬼課長が血相変えて桃原さんを抱き上げたんですから、今頃、彼女、大変な思いしてますよぉ。」
「それは、ほ、本当ですか?」
「まぁ、適当な頃を見計らって雉原さんを投入する手筈になってますので安心してください。それに課長のあんな姿をみせられたんじゃ、みんなも諦めますよ。」
乾くんによるとそんな内容だった。
時計を見ると、そろそろ雉原が到着する頃だろう。
それでも彼女を思うと心配ではあるけれど、ここはあいつに任せるとするか。
僕は一人家路に向かった。
長い長い回想を経て牛丼屋を後にする。
ふと、スマホを取り出し彼女に連絡をしたくなるのをぐっと堪える。
自分からそんな風に思うのもこれまでなかった。
会えないなら声だけでも聞きたいなんて。
彼女は今日は女子会という名の公開処刑だ、と言うような事を言っていた。
僕が「どういう意味?」と聞くと
「全部、課長のせいです。」
と、言っていた。
ワケが分からずそれとなしにその辺りの事情に詳しそうな乾くんを捕まえて聞いたところ、
「当然じゃないですか、飲み会の席で桃原さんが倒れた時、遠い席からすっ飛んできて、しかもですよ、頭を打たないようにとナイスキャッチしていた俺を押し退け桃原さんを軽々抱き上げると颯爽と出ていったじゃないですか、課長。」
「ああ…、あの時は必死でしたから何も考えず気が付けば体が動いていました。」
その通り答えると
「暫く悲鳴が止まりませんでしたよ。女子社員の。雉原さんが叱りつけて漸く収まったくらいですから。」
「そんな事になってたなんて知りませんでした…」
こっちはそんなどころではないから全く知らない話だ。
「いつだって冷静沈着、難攻不落の鬼課長が血相変えて桃原さんを抱き上げたんですから、今頃、彼女、大変な思いしてますよぉ。」
「それは、ほ、本当ですか?」
「まぁ、適当な頃を見計らって雉原さんを投入する手筈になってますので安心してください。それに課長のあんな姿をみせられたんじゃ、みんなも諦めますよ。」
乾くんによるとそんな内容だった。
時計を見ると、そろそろ雉原が到着する頃だろう。
それでも彼女を思うと心配ではあるけれど、ここはあいつに任せるとするか。
僕は一人家路に向かった。



