Tell me !!〜課長と始める恋する時間

女性というのは強いなとこの歳にして初めて知った。


別れを告げられたと言っても同じ職場にいる以上、顔を合わせない訳にはいかない。


極力、今まで通りと思うのに空回りしている自分に幻滅した。


それに引き換え彼女は以前よりも更に仕事に集中し、黙々と業務をこなしていた。


無理しているんじゃないか?


ある時、些細なミスを見つけた時、そう思うのにこの現状に上手く対処出来ずにいた僕は必要以上に彼女に素っ気なくする。


「早急に措置を。」


目も合わすことなく。全く大人げない。


それでも彼女は嫌な顔一つせず、言われた仕事をきっちり仕上げてくる。


女性は強い。


情けない男を絵に描いたような自分に嫌気がさしてきた。


そして、そんな状態で仕事をしていた僕はかつてないほどの大きなミスを犯してしまった。


重要な資料内容を全く別の取引先にうっかり転送してしまったのだ。


もしその情報が業界に出回ってしまったなら、下手すれば会社に相当な損失を与えかねない事になる。


たまたま送りつけてしまった相手先が雉原と親交のある人だった為、事は大事にならずに済んだから良かったものの。


処理を終えた後、誰もいなくなったオフィスで雉原に怒鳴られた。


そう言えば大学の頃もこいつに怒鳴られた事があったっけ?


女の扱いが酷すぎると。


そんな事をぼんやりと思い出していると痛いところを付かれた。


「家の為だからと偉そうな事を言っておきながら、実際は好きな女の事で頭がいっぱいじゃない。そんな状態でよくも好きでも無い女の人生まで背負い込むなんて言えたものよね。あまりにも無責任すぎて呆れてものが言えないわ。」


いや、十分に言ってるだろう、ものを。


とは言えないな。


全くその通りだと思った。


こんなにも仕事が手につかないくらい彼女に心を奪われているなんて。


以前はそういう行為に嫌悪感を示していた自分がコソコソと彼女を目で追うような事をしているなんて。


こんな状態で人の人生まで背負い込むなんて、確かに無理な話だ。