Tell me !!〜課長と始める恋する時間

すると、突然彼女から会って話がしたいとメールを貰った。僕は直ぐに返事を返した。今から会おうと。


思えばこれまでメールの一つでこんなにも一喜一憂した事はない。


約束の場所で彼女を見つけるとつい手が伸びそうになる。僕にそんな資格はもうないというのに。


それでも彼女の唇を奪い、そして彼女の肩に軽く掛かる柔らかな髪を掬ってその白い首筋にまた鮮やかな痣を残したいと思う僕はどうやら重症のようだ。


そんな事、許されるわけないのに。情けない願望を抱く僕とは反して彼女は僕に思いを告げてくれた。


僕の事が好きだと。


それは真っ直ぐに僕の胸に響いた。


けれど、今の僕にはその思いに応える資格なんてない。


戸惑う僕に彼女はなんとも清々しい笑顔で終わりにしましょうと告げた。


その笑顔に僕は何も言えなかった。


いや、なんて言えばいいのか分からなかった。


彼女が去った後も暫くその場から動けなかった。


やがて、ある思いに辿り着き、一人ベンチに座り納得する。


そうか、これがそうなのか。


どうしようもない理由があったとしてもその思いを止める事が出来ない。


彼女との将来は恐らく今の僕には望む事などできない。


それでも彼女を好きだという事。


見返りを求めない思い。


それが本気で人を好きになると言うことなのか。


けれど、


今となっては何もかも遅い。


彼女が去っていく後ろ姿をただ見つめるしか出来なかった。


これが彼女が出した答え。


これが彼女なりに伝えてくれる僕に対しての愛のカタチだと分かったから。


何も言えなかった。


それでもどうしようもなく君が好きなんだと言う一言すらも告げる事が出来なかった。