Tell me !!〜課長と始める恋する時間

いつしか僕は彼女を独占したいと思うようになっていた。


だから、彼女が同じ課の乾と何やらコソコソしている姿に苛々した。


この感情はなんだ?


例えるなら嫉妬なのだろう。


けれど恋愛ではない。恐らくお気に入りの玩具を取られた子供の気持ちに過ぎないとやり過ごそうとしていた。


しかし、子供の頃から裕福な環境に置かれ、玩具にしても何でも手にしていた僕はお気に入りの玩具を取られた時、どのように対処すべきか学んではこなかった。


まともな恋愛をしてこなかった僕は初めて抱いた嫉妬と言う感情にただ相手にその苛立ちをぶつけることしか出来なかった。


まるで子供と変わらない30越えた大人がここにいた。


少しずつ僕は彼女の存在を大切にしたいと思うようになっていた。


クリスマスに流行りの店に食事に行かなくていいという彼女。ホテルのラウンジから夜景を見なくてもいいという彼女。


僕との今を大切にしたいと、僕と今を過ごす事が幸せなんだと笑顔で話す彼女。


僕はその彼女の笑顔を独り占めしたいと思った。


僕の側にいて僕だけにその笑顔を向けていろと勝手な事を望むようになっていた。


僕は彼女に惹かれつつあった。


本気の恋と呼べるものではないにしろ、確実にその思いは僕の胸に広がりつつあった。