Tell me !!〜課長と始める恋する時間

彼女が僕の下に付き働くようになって三年目を迎えていた。


ある時、急な仕事で残業をする事になった僕と彼女。


いつもなら、黙々と手を動かし作業を進める彼女が仕事終わりに突然聞いていた。


ーーー特別な存在はいないのか、と


恐らく、残業するにしてもいつもなら誰かしら他にも残っていたのにたまたまこの日は二人だった事で彼女の心境に変化があったのだろう。


それにフロアに残るのも僕と彼女だけだ。


つい、口が滑って気になっている事を聞いたのかもしれない。


僕は軽く交わそうと思った。


くだらない、と。


けれど、これまでの女達とは少し違う彼女に興味を持っていた僕は直ぐに思い直した。


利用出来るんじゃないかと思ったからだ。


この頃、僕は父よりある話を持ち掛けられていた。早い話が縁談だ。


ここの所、会社の経営が上手くいってなかった父は僕に取引先に婿養子に入れと言ってきた。援助を受けるために。


実父との久しぶりの食事会での会話がこんな内容だった事に落ち込むよりも、やはりこういった事かと妙に納得した。


しかし僕はこれで父に受けたこれまでの恩を返せる時が来たと思った。


思う所は多々あれど、何不自由なく育てて貰い、今の自分があるのは父のお陰だと思っている。


言われるがままその話を承諾した。と同時にまた誰かが囁く。


お前はこのまままともな恋愛をする事もなく一生を過ごすのかと。