Tell me !!〜課長と始める恋する時間

「雉原さんに？」


「ええ…、相手先の会社の事、聞きました。」


「じゃあ、課長の婚約の話は取りやめに？」


「しかしながら、確実な裏を取れていないので今の段階では雉原の話を全て信用する訳にはいきません。」


淡々と話す課長。


確かに何事にもデータ重視、曖昧な表現を許さない課長なら言いそうな事だ。


きっとこれまでならそんな冷たい態度に傷付いてたかもしれない。距離を感じていたかもしれない。


けれどさっきから私の前髪を優しく撫で付ける課長。


言葉とは裏腹な課長の行動に胸が締め付けられる。


「課長…」


私、やっぱり課長の事、好きだ。


身を引くことが課長の為と一度は思ったけれど、課長から伝わるこの手の温もりは特別なものと受け止めていいですよね？


「私、課長の事…」


「待って。」


「えっ、」


なんで？


もう気持ちを伝えることすら許してもらえないの？


「僕から先に伝えたい事があります。」


「伝えたい事？」


課長の言葉を待つ。


「知っての通り、僕は本気で人を好きになる事はないだろうとずっと思ってました。仮に好きになったとしてもそれは一時的なもの。人の心に永遠なんてないものと考えていました。けれど君と出会い、君という人を知る度に僕はこれまでに感じたことの無い様々な感情を得た。」


言葉は相変わらず淡々としているのに、その眼鏡の奥に見える瞳には優しさが滲んでいる。


「そして僕が最終的に辿り着いたのは、」


ーーー君との恋を守りたい、という思いでした。


「ほ、んと…に？」


声が掠れて上手く言えない。


「ええ、本当に、です。」