怒涛の年末年始が終わった。


なんだろ、休みだったのにちっとも休んだ気がしないんだけど。


あの日、お父さんとお母さんはやはり予定より早めに帰ってきた。


二人共、娘の事を心配してくれてたんだね。


だよね?


なのか?


そう思ってしまうほど二人共、私の事はほぼスルーだった。


無事でよかったよかったと最初に言った後はお父さんもお母さんも課長ばかり。


お父さんはまたもやお酒飲もうって誘い出すし、お母さんは趣味の悪い温泉土産をいくつも渡してた。


まっ、良いけどね。


それがうちの家族ってもんだしね。


そして休み明けのだるさを引きずりながらも気付けば1月も半ば過ぎている。


相変わらず、お昼は誰も来ない第三会議室で課長と二人、お弁当ランチを続けていた。


女王様こと、雉原さんと乾くんはあれ以来、来ていない。


雉原さんは仕事が多忙らしく、ほとんど外出のようだし(忘れそうになるけど課長補佐だもんね)


乾くんは私がお昼になり席を立つとにやりとこちらを見るものの何も言ってこない。


それなりに気を使ってくれてるんだろうと思う。


一応、乾くんにはたまたま休憩室で二人になった時にこっそり打ち明けた。


課長との事を話したらとても喜んでくれた。


他の人が休憩室内に入って来たから詳しい事は言えなかったけど雉原さんにもきっと伝わってると思う。


なんだかんだはあったけど、協力すると言ってくれてた二人にはちゃんと改めて報告したいな。


思えば年が明けたのと同じように大きく変わった事、それは年末までは一方的に私が課長を振り向かせたい一心だったけど、


今は違う。


課長は私を好きだと言ってくれた。


そう、この仕事一筋、難攻不落の課長が私の事好きだっていったのよぉ。


みんな聞いてちょうだいっ。


メガホンを持ち社内中、叫びながら歩きたいくらいだ。


ああ、もう、幸せすぎるっ。


「桃原さん、桃原さんっ。」


「えっ、はい?課長、どうかしましたか?」


つい妄想に走ってしまってた。


はあ、それにしても今日もうっとりするほどの綺麗なお顔。


「そのだらしない顔、止めて貰えますか?食事が喉を通らなくなります。」


「はい?」


「その中途半端にニヤけた顔が薄気味悪いと言ってるのです。」


「・・・・・」


薄気味悪いって…


好きな子に薄気味悪いって言ったことある人、はい、手挙げてっ。


と、社内の全男性社員に聞いて回ってデータを取りたい。


本気で思った瞬間だった。