Tell me !!〜課長と始める恋する時間

家に戻るとやはり絶妙のタイミングでシメのうどんが出来ていた。


ダシがよく出てるうどんはそれはもう美味しくて。


シメのアイスも頂き、それから少しすると課長がそろそろ私を送り届けると言ってくれたので今、二人で私の家に向かってるところだ。


「すいません、送って頂いて。」


もちろん、私達が帰ることを女王様が簡単に許す訳もなく何度も何度も引き止められ、最後、課長は半ば強引に私を引き連れ家を出てきた。


まるで逃走だよ。今なら軟禁騒ぎも納得できる。


駅からの道のり、一人で大丈夫ですと言ったけど結局、うちの最寄り駅で課長も一緒に降りてくれた。


まだ年明けて2日。時間はそんなに遅くないけれど住宅街はとても静かだ。


「送るのは当たり前の事です。上司としての責任がある。それに正月早々、縁起でも無いことが起こると気分悪いので。」


なんだろう。


好きな人に家まで送って貰ってるのに複雑な心境になるのは、どうしてだろう。


よし、気にするな、私。今年もポジティブシンキングで乗り切ろう。


「だけど、意外にも雉原さん最後の最後はすんなり帰してくれましたね。」


まぁ、本当に最後の最後だったけど。


「確かにそうですね。」


「でも、課長から聞いていた話だとあのままもっと夜通しで強引な飲み会が始まってしまうのかと内心、ヒヤヒヤしてたんです。」


「僕も少し覚悟していたけど、あいつも歳を取ったという事でしょうか。」


「そんな事言てるって知られたら、雉原さんに怒られますよ。」


怒りを顕にする女王様の姿が簡単に想像できる。


「それは冗談だけど、雉原はあれでも実はとても気を使うやつです。恐らく僕と桃原さんの事を思ってあいつなりに気を回したのでしょう。」


面白くない。


「随分、雉原さんの事、お詳しいんですね。」


雉原さんからも課長からも異性として見る事はとないって聞いたものの、やっぱり妬けるものは妬ける。つい嫌みったらしく言ってしまう。


好きになったものの宿命だろうか。


そんな事を話していると遠くにうちの家が見えてきた。


もうお別れかぁ。素直にまだ帰りたくないって言えないのがもどかしい。


言ったってきっと軽くあしらわれるだけだよね。


でもまぁ、こうして手を繋いでくれてるだけでも満足しないと。


今日も課長はスッと手を差し出してくれた。あの日、公園でしてくれた様に。


だから私も何も言わず課長の手に自分の手を重ねる。