Tell me !!〜課長と始める恋する時間

「お邪魔します…。」


玄関に入ると


「待ってましたよ。外、寒かったんじゃないですか。コートはそこにかけて下さい。」


エプロンをつけたまま玄関先に出迎えてくれた乾くん。


おい、乾くんよ。
 

まるで君この家の奥さんのようじゃないか。


案内されるまま奥へと進む。


少し広めのリビングと対面キッチンがあり、日が良く入る明るい雰囲気の部屋だった。


リビングの中央にあるこたつには女王様が鎮座されており、既にアルコールを召されている様子だ。


「遅かったわねぇ。ほら、ここに座んなよ。ビールで良い?純太、ビール持ってきて。」


「はいよ。」


まるで嫁だな。


「あっ、私もお手伝いします。」


対面カウンター越しに乾くんから缶ビールを受け取る。


「課長、どうします?ビール飲みますか?」


この前の事もあるから聞いてみる。


「ああ、貰おうかな。ビールなら飲めるから。」


「なんだ、三鬼。あんたが下戸だって事、モモにもうバレてんの?」


「下戸呼ばわりは心外だ。」


「えっ、課長って下戸だったんですか?」


「だから、乾くん、人を下戸呼ばわりするのはやめたまえ。」


「なに格好つけてんのよ。下戸を下戸呼ばわりして何が悪いのよ。」


「だから、それが心外だーー」


ああもぉ、ゲコゲコ煩いなぁ。


「あのっ、新年の挨拶まだだったので言いますね、明けましておめでとうございますっ。」
 

「「「はっ?」」」


そんなに驚かなくても……


「……お鍋のいい匂いするし、早く乾杯して始めませんか?」


だってこうでもしなきゃ延々と課長と雉原さんの言い合いが終わらないじゃない。それに本当に部屋に入ってきた時からなんとも食欲を誘ういい匂いが…。


「えっと、じゃあ、桃原さん、これそっちにお願いします。」


乾くんからお皿やお箸を受け取る。


乾くんが持つ鍋を見ると


「うわぁ、美味しそう。」


「違いますよ。美味しそうじゃなくて、美味しいですからね。」


と、ウィンクを決める乾くん。


ああ、なんてイケメンなの。女子社員達に教えてあげたいよ。


このまま料理番組一本やれるんじゃないの?


イケメン男子が作るイケ飯とか?


「ん、んんっ。」


「えっ?」


「桃原さん、それをこちらに。」


私が乾くんのイケメンっぷりに感心していると課長に催促されてしまった。