「香那枝か。いい名前じゃん」

そこでハッと気づいて、カードをひったくるように取り返す。

つい相手のペースに乗せられていたみたい。

「な、なんの用ですか!?」

「俺は2年3組の澤木涼」

そう言って、澤木涼は初めて笑顔を見せた。

意外と人懐っこい笑みに、つられて私も微笑みそうになるのをあわててこらえる。

「じゃ、一緒に来て」

「え?」

「ひまでしょ? 紹介するからさ」


手を取られ、半ば無理やりに立たされた私は展開にまったくついて行けない。