メリー＊メリー

なんてロマンチックな言葉が思いついたのだろうと恥ずかしく思ったけれど、でも本当にそう思った。

女の子は僕に気づくと微笑んで、白い細い指で僕の手を掴むとふわりと地面に舞い降りた。


そして、微笑んだ。


陽だまりみたいな、おだやかな笑顔。


僕は目を見開いた。


ぶわっと風が吹きぬけた心地がした。


星のない夜空のような色の長い髪。

透明感のある白い肌。

髪と同じ色の大きな瞳。

さくら色の唇。

白いポンチョに白いワンピース。


彼女の全てに魅入ってしまった。


「ありがとうございました」

助かりました、と彼女は笑った。

屈託のない笑顔に、どきりと心臓が跳ねる。


「いや…それよりどうして空から降ってきたの？」

最初はどこからか飛び降りたのかと思ったけれど、よくよく考えると田舎なこの町には高いビルなんてない。


「ちょっと間違えちゃいました！」


あはは！と彼女は頭に手を当てて笑った。


ちょっと間違えたって、どういうことだろうか。

彼女の言っている意味はよく分からないけれど、よく笑う子だと思った。


あのひとの笑顔に似ている。


無邪気で、陽だまりみたいに暖かい笑顔。


「怪我はない？」と僕が訪ねると、「はい！」と彼女は元気に返事をした。


彼女は中学生くらいだろうか。

天気が悪くなる前に家まで送り届けないと。

そんなことを思っていると「あの」と彼女は遠慮がちに尋ねた。


「ここは、どこですか？」


キョロキョロとどこか不安そうに辺りを見渡している。


「え？」


もしかしてこの子は、迷子、なのだろうか。


「じゃあ、レグナ様を知っていますか？」

「え、レグナ…？知らないけど」


僕がそう答えるとなぜか彼女はパァッと明るい表情をした。