今日の朝食のメニューは昨日の夕食の時のお味噌汁の残り、ごはん、ネギと卵の炒め物。

「あ、昨日のお味噌汁…」

席に着いたレイはそんなことを呟いた。

「いらないなら食べないでいいよ」

ムッとして意地悪な言葉を返してしまう。

「食べます、とても食べたいです!」

レイは慌てて言い直した。

「別に怒ってるわけじゃないから」と笑って言うと、「知ってます」と返ってきた。

「椎の作るご飯はとても美味しいですから、椎の作ったごはんは何でも食べたいんです」

幸せそうなわくわく顔で「いただきます」と両手を合わせるとお味噌汁を啜った。

そして「美味しいです」とにこにこ笑顔でそう言う。

「それは良かった」

それで僕も少し安心する。

いつもはそれだけなのに。

今日は、違った。


心の中のモヤモヤがまた膨らんでいく。


元日、レイに好きな人がいるかと聞いたときに「違います」と真っ赤な顔をして否定した。

けれど、それは否定したようで否定していなかった。

肯定、だった。

レイに好きなひとがいるんだと、分かった。

同時に、レイの好きなひとが誰なのか、気になって仕方がない。

好きなひとは誰なのか、問い詰めたかった。

けれど同時に聞きたくないと思った。

聞くのが怖いと思った。

どうしてだか、分からないけど。


今、僕の向かいに座るレイはにこにこ幸せそうに笑っている。

この笑顔よりずっと幸せそうな笑顔を、その好きなひとに向けるのだろう。


そう思うと、心の中が騒めくんだ。

風で波立つ水面のように、忙しなく、不安定に。

それと同時にモヤモヤとした得体の知れない感情が膨らむ。

レイとレイの好きなひとの将来。

それを想像すると、なんだか子供っぽいけれど、つまらないなと、すごく嫌だなと、そう思ってしまうのだ。

なんて自己中心的な考え方をするんだろう。

僕はこんなにも醜くて嫌な人間だったっけ。

はあ、と溜息を吐いた。