「ああ、あれはおみくじを引いた人達が結んでいるんだよ」

僕が説明すると、レイはなるほどと一言言って、じっとそれを見ていた。

相変わらず、レイは何も言わないけれど。

きっと、おみくじ引いてみたいんだろうな。

「レイ、おみくじ引いてみる?」

レイはパァッと明るい顔をした。

「いいんですか?!」

うれしいという気持ちがまっすぐ伝わってくる。

分かりやすい、そういうところ。

ほんと、可愛すぎるんだけど。

「うん、いいよ」

僕が頷くと、「こっちみたいです!」とレイが僕の手を引っ張った。

すごくおみくじを引きたかったんだろうな。

その嬉しそうな顔に思わず笑みが零れた。

「おみくじ、ください!」

レイは自分から巫女さんに話しかけていた。

「あなたも引きますか?」

巫女さんに尋ねられ、僕は頷いてしまった。

しまった、僕はいいです、と断るつもりでいたのに。

けれど今更おみくじ引きません、なんて言えるはずもなくて、僕は2人分のおみくじの代金を支払った。

レイは箱の中に手を入れて、嬉しそうにおみくじを選んでいた。

この神社のおみくじは、四角い大きな箱の中にくじが入っていて、それを自分で取る、という形式だ。

「レイ、そろそろ選びなよ」

「えー?でも、どれにしようか迷うじゃないですか!」

そうは言われても、選び始めてから2分は経とうとしている。時間かけすぎだ。僕は呆れて溜息を吐いた。

「じゃあ、あと3秒で選んで」

「え!?」

「はい、3、2、1」

慌てふためくレイを無視して強引に3秒を数え、僕はレイの腕を掴んで箱の中から出した。

「椎、ひどいです!どれにしようか選んでいただけなのに!」

レイは信じられないと言わんばかりに怒っている。

「選ぶのに時間かけ過ぎ。他の人もおみくじするんだから、あんまり迷惑かけないで」

僕が溜息を吐くと、「ごめんなさい」とレイはしゅんとして謝った。

「そんなに怒ってないから」と僕は少し笑って、おみくじの箱の中から直感で1つ選び取った。

「早いですね!」

レイは呆気に取られたような顔をしていた。

「まあ、直感で選んだからね」

「直感…」

「あんまりこういうの、時間かけない方がいいんだよ」

「そうなんですか!」

ガーンと効果音が聞こえてきそうなほど、レイは衝撃を受けたような顔をしていた。

「いや、僕がそう思うだけで実際は分かんないけどさ」

ショックを受けるレイがあまりにも不憫に思えて僕は慌てて付け加えた。