「はい!」

元気いっぱいで、穏やかな笑顔。

見ているこちらまで笑顔にしてくれるような笑顔。

ほんと、この笑顔に僕はとことん弱い。

さっきまで怒っていた気持ちがその笑顔を見た瞬間どこかに飛んでしまったのだから。

その時、不意にケータイが鳴った。

「何の音ですか?」

レイが不思議そうに尋ねる。

「ケータイの着信音」

僕は答えながらケータイの画面を開いた。

どうやら着信音はメールが届いたことを教えてくれていたらしい。

「これは…」

メールの送り主は、想定していなかった人だった。

「どうしたんですか?」

レイが不安そうに尋ねる。

「いや、紗由から明日の初詣一緒に行かないかって誘われた」

「紗由さん…あぁ、あの時助けてくれた方ですね!」

パン、と手を叩いてレイは明るい顔をした。

「なんでそんな顔をしているんですか?嬉しくないんですか?」

レイは僕の顔を覗き込むようにして見た。

「いや、嬉しい、んだけど…」

これは、どうしたものか。

「…レイも一緒に来てって言われたんだ」

レイは驚きながら自分を指さした。

僕は黙って頷いた。


「もう、いい加減にしなよ」

紗由からのメールが届いた数時間後、僕はまたレイに怒っていた。というか、呆れていた。

「だいじょうぶです…!」

レイは目をこすりながら起きていることに一生懸命だった。

「もういい加減寝なよ」

「いやです!」

年明けの瞬間を祝いたいらしいレイはそのために何が何でも起きているんだと宣言し、眠たい目が決してつむることがないように必死に目に力をいれている。

そのせいでいつもより目つきが悪いのだが、怖いどころかとても面白くて笑えてしまい逆に僕の眠気は覚めている。

「年明けの瞬間の少し前になったら起こしてあげるから」

「いやです、おきてま、す…!」

なんという執念。いや、ただの頑固といった方が正しいかもしれない。まったく、このおとぼけ妖精は。

「じゃあ、頑張ってね」

レイは頷きながら細い目を擦っては年末の特別番組を必死に見ている。

僕は溜息を吐いた。