「まだ?まだってなんですか?」

「まだ、その時じゃないんだ」

僕は腕時計を見た。もうすぐ、もうすぐなんだ。

「レイ、もう少しだけここにいよう」

「どうしてですか?」

レイは意味が分からないとでも言いたそうだ。

「それはもうすぐ分かるから」

「だから、何が分か…」

分かるんですか。

レイが言葉を言い終わるその前に、それは起こった。

クリスマスツリーが多くの歓声に包まれる。

「レイ、見て」

僕がレイの後ろ、クリスマスツリーを指さすと、レイは恐る恐る振り返った。

「うわぁ…」

たくさんの光がツリーの枝から溢れているようだった。

ツリーのあちらこちらで光っては消え、消えては光る淡い穏やかな白い光は、まるで夜空に瞬く星のようにも思えた。

ツリーのてっぺんを見上げれば、凛と誇らしそうに大きな黄色い星が光っていて、まるで惑星のように思えた。

「ね、待った方が良かったでしょ?」

僕が悪戯っぽく笑うと、レイはツリーを見つめたまま頷いた。

そのまっすぐな瞳にはきらり、きらりと瞬く光が移り込む。

「ありがとうございます」

唐突に、レイは言った。

「どうしたの、急に」

僕が少し笑って尋ねると、レイは「嬉しかったです」と言った。

「椎と出かけて、迷子になっても見つけてくれて。そして、こんな風に椎と一緒にクリスマスツリーを見ることができて。本当に、嬉しかったんです」

レイはうっとりと目を閉じて心から嬉しそうな顔をする。

「だから、ありがとうございました」

にっこりと、微笑む。

その笑みが本当に可愛らしくて、優しくて。

今日あんなに心配をかけさせられたというのに、思わず僕も笑顔になってしまった。

「どういたしまして」

そして2で笑い合って、瞬くツリーを眺めた。