メリー*メリー

「そっか…」

…レイ、レイ。どこにいるの。

もしかして、危険な目にあったりしてないよね。

「このアーケードじゃない他の場所にいるかもしれねぇな」

ユズは言った。

「見失ってから結構時間が経つだろ。これだけ時間が経ってりゃ、他の場所に移動しててもおかしくはねぇな」

僕はギュッと両の拳を握った。

…レイ。さっきからずっと、君の名前を呼び続けているんだ。

この声が聞こえているなら、返事をして。

「大丈夫」

ふわりと花が咲くみたいに。

「大丈夫、きっと見つかるよ」

紗由が優しく笑うから。

「…うん」

僕も少し笑ってみせたんだ。


「ここにいねぇってなると、どこいったんだろうな」

ユズは「分かんねぇな」と溜息を吐いた。

「まさか、駅に行ったとかじゃないよね?」

紗由が焦ったような表情をする。

「電車に乗った、とかじゃないといいんだけど…」

僕も溜息を吐いた。

「とりあえず駅に向かおう」

立ち込める重たく暗い雰囲気を吹き飛ばすように、ユズが明るいしっかりした口調でそう言った。

「え、駅に?」

僕と紗由は目を丸くした。

「でも、駅にいるって確証はないでしょう?」

驚いたように言う紗由に、ユズは言った。

「あぁ、いとこが駅にいるって確証は確かにねぇよ。でも、駅の近くには…」

ニタッと笑顔を浮かべるユズの言いたいことが分かった僕は慌ててユズの方を見た。

「そっか、交番だ!駅の近くには交番がある!」

「あぁ」

満足そうな顔をしてユズは言った。

「もしかしたら迷子ってことで保護されている可能性もある。それか目撃情報な」

「椎くん、行こう!」

僕はユズと紗由に頷くと3人で駅へ向かった。