「煥さん、どうして動けるの? 術は解いていないのに」


「踏んだ場数が違うんだよ。銀髪の悪魔をナメんな。目の前のケンカ、黙って見てられるか」


「放してください。動いたら痛むはずです」


「痛ぇよ。手足がちぎれそうに痛い。でも、放すもんか。月が沈むまで、ずっとこうしててやる」



小夜子は煥先輩に危害を加えられない。


だから、煥先輩が小夜子を抑えるのは正しい。


戦術として正しい。



でも、わたしの胸は痛んだ。


煥先輩が小夜子を抱きしめるなんて。